認められなかった定額残業代制度
未払い賃金・残業代のの請求を受けた際、特に会社側にとってインパクトが大きい「認められなかった定額残業代制度」の判例を紹介します。
A社が定めていた定額残業代制度
- 基本給:25万円
- 所定労働時間:月170時間
- 営業手当(定額残業代):5万円(50時間分の残業代を含む)
営業手当を有効な定額残業代として認めないという請求
このようなA社で働くB氏は、以下の残業をしていました。
- 月間20日×午後5時30分から8時30分までの3時間=合計60時間の残業
B氏は過去2年分の残業代を請求して来ました。B氏の請求は、営業手当ては有効な定額残業代として認められないというものです。
定額残業代制度が認められず、営業手当が残業代計算の基礎に
A社の主張
- 50時間分の時間外手当は支払い済であるとして、月間10時間分の未払い分のみ支払い義務を認める
- 時間単価1,833円(25万円÷170時間×1.25)×10時間×2年分=44万1,120円の支払いを行う
この事例において、以下の理由で裁判となれば、A社の制度は認められず、B氏の主張が認められることになります。
- A社の定額残業代制度は、実際に50時間を越えた精算をしていないこと
- 50時間分が5万円であって時間単価が1,000円と低額であるということ
結果として、44万円余りを予定していた未払い残業代の支払いは、その7倍以上の317万円を超えることになります
- 営業手当5万円も所定賃金として残業代計算の基礎に加えられることになる
- 時間単価は30万円÷170時間×1.25=2,205円、さらに月間60時間分を支払うことになりますので、2,205円×60時間×2年分=317万5,000円を支払わなければならない
営業手当としてせっかく5万円を支払い続けたのに、残業代とはならない上にかえって基本給のように扱われ、何のための定額残業代制度か分かりません。
制度の見直しをお勧めいたします
平成15年~20年頃に定額残業代制度をコンサルタントが夢の制度のように案内する例が多々ありました。
当時の制度のままであれば、大きな問題を有している可能性があります。裁判となる前に、専門家による見直しをされることをお勧めします。
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