遺言書作成の必要性
遺言書を作成していない場合には、遺産相続の際に、多大な紛争が生じる例が頻繁に見られます。そして、その紛争は、身内間であるからこそ、泥沼化し、当事者を疲弊させてしまいます。
スムーズな遺産分割が行えない結果、相続税の法定納期限(死後10ヶ月)内の申告による税務メリットが得られない、拘束された預貯金が引き出せず、相続税の支払いに苦慮するといった問題が生じかねません。このため、当事務所では、相続対策としての遺言作成を強くお勧めしています。
最近は、当事務所には事業承継を意識した相談が増加しています。事業承継といえば聞こえはいいですが、次世代の相続人にとっては、実質的な支配権争いの様相となることもあります。当事務所では、遺言を作成される立場の方のご意向、悩みを聞きながら、事業承継、支配権争いの回避に向けたご提案を致します。
弁護士による遺言書作成
弁護士による遺言書作成のメリット
自筆による遺言書作成も可能ですが、しばしば法的要件を満たしていない例が見受けられます。
おそらくは専門家に相談した、あるいはインターネットや書籍のひな形を参照したと思われる遺言書には、重要な点で記載に不備がある例があります。記載に不備がある場合には、最悪の場合、遺言書を作成した時点で望んだ内容と異なる結果となりかねません。
- 弁護士に依頼することで、法的に誤りの無い遺言書の作成ができる
- 弁護士は相続での紛争を多数経験しているため、できるだけ紛争の相手方となりうる者の主張を意識し、リスクを回避できる遺言書作成の提案ができる
- 遺言執行の際にも、弁護士が遺言執行者となることで、よりスムーズな手続きが可能
信託銀行などでも遺言書作成・遺言執行のサービスもありますが、費用は弁護士に依頼する場合と変わりません。さらには紛争が生じやすいケースには応じてくれない等、あらゆる遺言書作成に対応できるわけではありません。
このように形式的な問題点をクリアできるだけでなく、相続での紛争を想定しているからこそ作成可能な遺言書があると考えています。
弁護士による遺言書作成の必要性が大きいケース
以下のような事例に該当するのであれば、直ちに遺言書を作成すべきと考えます。
内縁の配偶者を保護したい
現在のところ、内縁の夫婦については、法定相続人となれる法制度にはなっていません。最近では、同棲婚というスタイルも報道されるようになりましたが、これも同様に法的には内縁と評価されます。内縁関係にあるパートナーに財産を残したいのであれば、遺言書がなければ実現しません。仮に、法定相続人がいるのであれば、法定相続人が全財産を取得するとお考え下さい。
遺言書が無いことで、パートナーが生活をする拠点、日々の生活費を失う可能性がありますので、十分にご注意ください。
そのほか、法定相続人ではない方に財産を渡したい方、法定相続人のうち誰かには財産を渡したくない、というような場合には、遺言書の作成は必須です。
相続財産に自社株式等が含まれる
オーナー社長が100%の株式を持っている場合には、その株式は遺産分割が終わるまでは準共有状態として、株主権の行使が全くできないことになります。そうすると、株主権の行使ができないので、株主総会の開催すら危ぶまれます。
たとえば、親族で経営している会社のうち60パーセントの株式を有している方が死亡したとします。このとき、この60パーセントの株式を有している方のうち、議決権を行使する方が決まらない場合には、残りの40パーセントの株主が株主総会で決議をする可能性もありえるのです。
そうすると、事業執行は思わぬ方向に進む可能性もありますし、最悪、100%の株式を持っている方が死亡し、その遺産分割協議が整わない場合には、誰も株主権を行使することができないという深刻な問題が生じます。さらに、深刻なのは、亡くなった社長のほかに取締役がいない場合です。取締役がいないので株主総会の招集もできない、株主総会を招集しても何も議決ができない、という事態になりかねないのです。
自社株式を有している場合には、会社の存続、従業員の雇用といった重大な問題に直面しますので、遺言書の作成、あるいは、生前に後継者と株式の行方を定める等の対応が不可欠です。
医療機関など個人名義で大きな事業を行っている
医療機関を法人化しておらず、院長が代表をしている例が典型的ですが、院長に不測の事態が生じた場合には、その預金が凍結され、医院経営の尊属に支障があります。これは医療機関に限ったことではありませんが、個人事業主で、規模が大きいと口座の凍結により、実業務の後継者がいたとしても、その資産承継、口座の扱いなど、簡単には話が進まず、大きな痛手となることが予想されます。
法定相続人の中に音信不通の親族がいる
遺言書が無い場合には、遺産分割には法定相続人全員の署名、押印による遺産分割協議がなされなければなりません。仮に音信普通の親族がいる場合には、不在者財産管理人の選任が必要となるなど、手続きに相当な手間を要するほか、その音信不通の親族にも、法定相続分の財産を残さなければならなくなります。このような事態を避けるためにも法定相続人に連絡がとれない方がいる場合には、遺言書を作成しておくべきです。
このような場合には、遺言書の作成、遺言執行者の選任が強く求められます。
後妻が関与するなど、相続人間ですでに複雑な事情がある
相続の問題がなくとも親族間に火種がある場合には、相続の際にも紛争となる可能性が高いです。
典型例は、後妻と元妻の子の争いです。被相続人の存命中は紛争が生じていない場合であっても、どうしても紛争が生じやすい傾向にあることは否定できません。
被相続人の責任として、遺言を遺さずに「仲良くするように」と言うだけでは足りません。具体的に遺産分割協議を実施することができないことを想定し、被相続人にて遺言書を遺すべきです。
遺言書を作成する際のルール
自分で相続に関する紛争を予防したいと考え、遺言書を自作することも可能です。ただし、以下の項目は十分にご検討のうえ、作成すべきです。
遺言書に必ず記載しなければいけないこと
自分で遺言書を作成しようとした場合(これを自筆証書遺言といいます)には、法律上の決まり、必ず記載しなければならないとされている項目があります。これは、誰が記載したのか明らかにし、変造、偽造を防止し、遺言書の作成日を明らかにすることで複数の遺言書の存在の際の前後関係を明確にする目的があります
- 自分で全文を手書きしなければならない
- 日付の記載
- 署名、押印
パソコンで作成した文書に署名のみを残した場合の遺言については、無効とされると理解されています。もっとも、今日、手書き文書のほうが珍しい中で、このような解釈がいつまで維持されるのかは不明ですが、現在のところ、全文自筆による手書きでなければならないとご理解ください。なお、自分で記載することが必要であり、第三者が代筆し、本人が署名のみを行なう遺言に効力はありません。
記載は元号によるものでも西暦でも構いません。記載した日付けが分からないと無効とされる可能性が高く、「平成29年5月 新緑のまぶしい吉日」といった記載は絶対に避けるべきです。
押印は実印でなくともよいというのが裁判例ですが、本人の記載であることを明らかにするためには、実印によることが望ましいことは言うまでもありません。
自筆証書遺言作成上の注意点
自筆証書遺言の作成に際しては、いくつかの法律上の決まりがあります。
手書きで記載した文書に誤りが見つかった場合、その加除訂正の方法も法律上、定められています(ただし、裁判例では、些細な訂正方法の違いについては、遺言書を有効としている例もあります)。
また、二人で一緒に一通の遺言書を作成すること(共同遺言といいます、)は民法により禁止され、効力が無いと解されています(ただし、裁判上、同じ封筒に入っていたが、用紙が別であった、等の事情により、有効と判断された例もあります)。
このように自筆証書遺言の作成においても、自分の判断で問題がないと思っていたことが、思わぬ落とし穴となりうるのです。
「効力のない遺言」を避けるために
遺言に記載する項目は、基本的に自由です。遺言を書こうという気持ちになった、あるいは、書いてもらおう、という気持ちになったのであれば、何か目的があるはずです。まずは、その目的を整理し、その事実に即した文書を記載すればよいということになります。
ただし、遺言書で実現したかったことが、自筆の遺言では、法律上、実現しえない「残念な遺言」となることは大いにありえます。例えば、二男に経営している会社を任せたいと考えていた場合に、「二男に会社のことは任せる」と遺言書に記載しても、この文言では、会社の株式を二男に相続させる内容とは解釈できないと思われます。自社の株式を相続させたいのであれば、「A株式会社株式 1000株を二男に相続させる」と明記しなければいけません。なお、「二男を取締役とする」と遺言書に記載しても、取締役の選任は株主総会での決議事項ですので、この遺言は、事実上のメッセージにとどまり、法的効力を有するかは疑問です。
このように、記載すべき内容は、専門家に十分に吟味をしてもらうべきです。
遺言書作成の準備
遺言書には、一般的に「Aさんに、特定の財産を遺す」ということを目的とします。そこで、まず、「誰に」対して、という点と、「どの財産を」という点を明確にしなければなりません。
「誰に」という点は、自分と遺贈の対象であるA氏の住民票、戸籍を準備することになります。せっかく晩年に内縁関係にあったAさんに財産を遺そうとしているにも関わらず、Aさんの名前を間違っては大問題です。そして、「どの財産を」という点は、預金であれば通帳、不動産であれば不動産登記簿、会社の株式であれば、会社の登記簿、定款、有価証券であれば、その証券が必要になります。
財産の特定ができなければ、正確な遺言書の記載は困難です。
遺言書を書くのが難しいと思ったら
このように、遺言書をご自身で作成することは極めて難しいことです。私どももご相談を受けた場合には、自筆での遺言書はお勧めしません。可能な限り、専門家に相談する、公正証書遺言(公証人役場で作成するので間違いがありません)にするしかありません。せっかく記載した遺言が無効となるのは、もったいない限りです。
公正証書遺言の作成
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証役場にて公証人が遺言をする方から遺言の内容を聞き取って作成するものです。公正証書作成の場には遺言をする方・公証人・証人として2名が立ち会う決まり(当事務所の場合、弁護士2名が公正証書遺言の証人となることが可能)です。このような厳格な手続きの下で作成された公正証書遺言は極めて信用性が高く、後日、遺言が無効であるなどと言ったトラブルの発生を回避することができます。
弁護士+公正証書遺言
公正証書遺言を作成する場合には、公証人役場で相談をすることで解決ができそうに思われるかもしれませんが、必要書類の準備、その後の遺言執行者の選任など、公正証書遺言であっても、専門家による助言は不可欠です。
当事務所では、後日の紛争リスクをできるだけ低下すべく、遺言書は公正証書遺言によることを原則としています。弁護士+公正証書遺言とすることで、完成度の高い遺言書が作成できるのです。
当事務所による遺言書作成
当事務所の特徴
- 専門性
- 信用性
- 税務面のサポート
- 相続に関する紛争取り扱い実績
福岡県行政書士会の会員向けに「遺言・相続」に関するセミナー講師を務めるなど、当事務所の高い専門性は対外的にも一定の評価を得ています
弁護士2名が遺言書作成時の証人となるので、その信用性はより高いものとなります。
税務面でのサポートも可能です相続税を意識したほうがよい場合には、専門の税理士を交えての相続対策の検討が可能です。
遺言書の効力に関する訴訟、遺留分に関する訴訟、事業承継(支配権争い)についての訴訟経験も多数あります。
遺言書作成の流れ
- 当事務所にお電話(092-771-1200)かメールでご予約ください
- 当事務所で相談、ご要望の確認(初回60分無料)
- 当事務所とのご契約・方針の検討・資料の準備
- 公正証書遺言作成
それ以後の相談料は30分5,000円です。ただし、当事務所で遺言書作成の場合には、相談料は遺言書作成料金から差し引きます
※資料の準備状況が順調であれば、ご相談から遺言書作成までの期間は2週間から1ヶ月程度です。
弁護士による遺言書作成の費用
弁護士費用
- 弁護士費用:10万円(税別)
- 実費:不動産登記簿等の取得費用(1万円~5万円の場合が多い)・出張旅費等
公証役場への支払
公正証書遺言作成等費用
相続する財産の価額 | 公正証書遺言作成費用(公証人手数料) |
---|---|
~100万円 | 5000円 |
100万円超~200万円 | 7000円 |
200万円超~500万円 | 1万1000円 |
500万円超~1000万円 | 1万7000円 |
1000万円超~3000万円 | 2万3000円 |
3000万円超~5000万円 | 2万9000円 |
5000万円超~1億円 | 4万3000円 |
1億円超~3億円 | 4万3000円+(5000万円ごとに1万3000円) |
3億円超~10億円 | 9万5000円++(5000万円ごとに1万1000円) |
10億円超~ | 24万9000円++(5000万円ごとに8000円) |
遺言手数料
- 遺言手数料:相続する財産総額が1億円以下の場合、+1万1000円
出張費用
公証役場以外の場所で公正証書を作成する場合(例えば、病院等が挙げられます)に必要
- 出張日当:2万円(4時間以内の場合は1万円)
- 旅費:実費
- 病床執務手数料:公正証書遺言作成費用の1/2
公正証書のページ数、正本・謄本作成の費用
- 公正証書のページ数:5ページ目以降は1ページにつき250円加算
- 正本・謄本作成費用:公正証書1ページにつき250円×部数
遺言書作成費用の例
(例1)資産総額3000万円、配偶者1名・子供2名
・資産総額3000万円
・配偶者に1500万円
・長男と長女に750万円ずつ
・公正証書4ページ、正本1部・謄本2部
<公証人手数料>
・配偶者(1500万円):2万3000円
・長男(750万円):1万1000円
・長女(750万円):1万1000円
<遺言手数料>
・1万1000円(総額が1億円以下であるため)
<その他書類費用>
・正謄本作成費用:正本250円×4ページ=1000円+謄本250円×4ページ×2部=2000円
<合計>
・弁護士費用:10万円(税別)
・公証役場に支払う費用:5万9000円
(例2)例1と同じ内容のものを出張で作成する場合
<出張日当等>
・出張日当4時間以内:1万円
・交通費:実費
・病床執務手数料:1万1500円+5500円+5500円(それぞれ公証人手数料の半額)
<合計>
・弁護士費用:10万円(税別)
・公証役場に支払う費用:9万1500円+交通費実費
遺言執行の費用
種別 | 費用 |
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弁護士費用 | 遺産総額の3%(税別) ただし、不動産登記に関する費用は別途必要です。 |
実費 | 不動産登記に関する登録免許税、司法書士費用など |
遺言書作成Q&A
特定の法定相続人に財産を渡したくありませんが、可能ですか?
ご事情によっては「廃除」という方法もありますが、家庭裁判所での手続きを要するなど、必ず実現できるわけではありません。むしろ、遺留分を意識した遺言書を作成するほうが現実的かもしれません。
遺言書の変更には対応できますか?
遺言書について変更されたい場合には、変更は可能です。従前の遺言書の問題点を検討の上、再度、ご相談からスタートすることになります。なお、費用については、再度必要になるとお考えください。
親に遺言書を作成してほしいとは頼みにくいのですが、よい方法はありますか?
できれば、相続の問題は、相続人となりそうな、例えばご両親から問題意識を持っていただきたいところですが、ご両親にとっては、相続の問題が生じるのはご自身の死亡後ですから、なかなか実感がわかないところです。
そのような場合には、両親自身の問題として「ご両親の老後が心配だから、一度、弁護士のところで話を聞いてきて」といった話をされてはいかがでしょうか。
当事務所では、相続の問題だけではなく、亡くなるまでの資産管理といった問題、相続税の実際、相続問題の実例といった一連のリスクを一般論としてご説明することができます。