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相手の不動産から回収する
相手方の不動産から債権回収をするための手続き
すでに判決を取得している場合には、相手方の預金といった差押等の手続きが可能です。さらに、不動産を有しているのであれば、その不動産から債権回収をすることが考えられます。
- 相手方の不動産に対して差押をする
- 競売申立をする
- 競売の結果売却できた場合には、その売却金から配当金として、債権回収が実現できる
競売により債権回収に要する期間:早くても数ヶ月
多くのホームページにも記載がありますが、競売申立から実際の債権回収には相当な期間を要します。早くても数ヶ月は要します。
競売申立がなされると、まずは、現況調査がなされます。この調査を経て、不動産鑑定士などにより物件の査定がなされます。この査定を踏まえて、いわゆる競売物件として公開がなされ、最低入札価格が明らかになります。
その後、入札期間を経て、競売により、最高落札価額で入札した方が実際に競売代金を入金することで、ようやく競売手続きが終了します。そして、その競売代金による配当表が作成され、配当が実際に行なわれることになります。
この期間は、概ね10ヶ月程度を要することも多々ありますし、私が経験した例では、落札後、代金納付がなされなかったということで、再度の入札となり、競売開始から配当まで1年を超えた例もあります。
競売に要する費用
弁護士費用は一般的には10万円から20万円程度です。物件の額によっては、より高額な弁護士費用を要する場合もあります。
その他、不動産鑑定士による調査費用を負担する必要があり、この金額は不動産の規模にもよりますが、30万円~といったところです。
なお、この金額は、競売申立の時点で、裁判所に納付する必要がありますが、競売によって配当となった場合には、その費用は競売費用として戻ってくることにはなります。ただ、債権を回収するためとはいえ、あらかじめ少なくとも数十万円は裁判所に出しておく必要がありますので、その覚悟は必要ということになります。
相手の給与から回収する
売掛金の差押えを考える
相手方の預金や不動産が分からなくても、取引先が分かれば、その売掛金を回収できる可能性があります。
たとえば、Aさんが個人事業主であれば、その商品の売り掛け先であるB社に対する売掛金債権を差し押さえることが考えられます。
この場合の差押は、Aさんの売り掛け先であるB社を第三債務者といい、第三債務者に対し、Aさんではなく、こちらに払うようにすることで債権回収を実現することになります。
裁判所からB社に通知が届けば、以後は、B社はAさんに支払いをしなければなりません。
給料を差し押さえる
相手方が事業主ではなく、給料をもらっているような方であれば、その給料を差し押さえることも考えられます。
この場合も勤務先であるC社に対し、給料を差し押さえることを通知し、給料から回収を実現することになります。
ただし、給料については、差押ができる範囲が限られているので、実際の回収額は限られることとなります。
また、相手方が大企業や公務員であれば、回収の見込みは大きいのですが、そうではない場合には、相手方が勤務先を辞めてしまえば回収できなくなるというデメリットもあります。
なお、養育費等の場合には、この給料差押の可能な範囲が拡大されますので、養育費の差押の場合には、給与差押がよく使われることになります。
具体的な手続きは
今回の場合には、裁判所での和解調書があります。そして、和解金が支払われなかった事実が分かる書類を準備の上、裁判所に債権申立の申立をすることになります。そうすると、裁判所は上記のB社あるいは相手の勤務先に通知が送付され、第三債務者は相手方に支払わず、債権回収が可能となります。
相手の株式からの回収
会社財産の差押は可能か
Aは会社の金を自由に使っているようですし、相手方は自営業者であり、会社と個人名義の資産は混在している状況です。乗っている高級車も会社名義です。このような状況で、債権を有する側からすれば、A個人の金はないが、B会社には金があるというのは許せません。
ただ、執行手続きを進めるに際して、名義が違う場合には、執行手続きを受け付けてもらうことは困難です。
たとえば、通称と本名が異なるというような事情であれば、執行の可能性もあるでしょうが、法人と個人の名義の違いの壁は大きなものがあります。
株式への執行を検討する
会社の財産に対して直接執行することはできませんが、Aが持っているB株式に執行する可能性があります。
B株式を差し押さえ、その評価により売却をすることで最終的な配当を得ることになります。
これが上場企業であれば手続きは難しくありません。実際に問題となるのは、いわゆる閉鎖会社の場合となります。
ただ、この手続きはあまり多用されていない印象です。この手続きの難しさは、株式を差し押さえられた相手方Aは、Bの株式の価値を高めるようなことはしないでしょうし、B社によほどの価値が無いと実効性は難しいかもしれません。
また、株式の評価をする必要がありますが、B社やAが協力するはずがありません。
このように、株式の差押はなかなか実効性が高くないという問題点があります。
しかし、AにとってB株式の差押は、相当なダメージにはなるはずです。もし、財産があるのであれば、事実上の弁済をする可能性もあります。このような効果を狙って株式を差し押さえることは有意かもしれません。
かなり特殊な手続きとなりますので、もし、このような事例で悩んでいる方は弁護士に相談をされることをお勧めします。
本コラムはリスク法務実務研究会にて当事務所の弁護士小川剛が寄稿している内容を、一部改訂して掲載しております。
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