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差押えをするには
強制執行を意識した和解の話に引き続き、債権回収における強制執行、差押えの概要について、説明をしたいと思います。
すぐに差押えたい
法律相談で「相手が売掛金を支払ってくれないので、どうしたらいいか」、「差押えというのはどうやったら出来ますか?」「仮差押えはどういうものですか?」と質問を受けることがあります。
まず、差押えとは、確定判決などの「債務名義」と言われる文書をもとに銀行預金を押さえるといった手続きとなります。債務名義さえあれば、裁判所に収める実費は数万円です。
これに対し、仮差押えは全く異なる手続きとご理解ください。
仮差押えは、まだ判決は取っていないけれど、裁判をしている間に相手方のお金が無くなってしまっては意味が無いので、今のうちに財産が散逸しないように抑えるという手続きです。
仮差押えの概要
仮差押えをするには、判決等が得られていない状態で相手方の預金等を拘束することになりますから、差押えを受ける側に配慮をする必要があります。
このため、仮差押えをする場合には、担保金の準備を求められることが一般的です。担保金の額は、概ね仮差押えを希望する額の2割から4割(平均して3割程度でしょうか)を準備する必要があります。
仮に1000万円の債権について仮差押えをする場合には、300万円程は納付しなければなりません。この300万円は手続きに問題がなければ、いずれ返還されるものです。
こうして300万円を用意して仮差押えの申立をしたとします。それでも、相手方の預金が十分でなければ、仮差押えが効力を発揮できない場合もあります。
また、仮差押えがうまくいって相手の1000万円の預金を拘束できたとしても、その1000万円がすぐに自分のものとなるわけではありません。
この1000万円は、裁判で勝ったときの強制執行の際の執行対象財産とできるだけであって、結局、1000万円が支払われるのは、裁判をした後、ということになります。
もちろん、支払いをちゃんとしないような相手方ですので、裁判が終了するまで資力が維持されるか分かりません。仮に、仮差押えによって、資金繰りに支障が生じ、破産でもされた場合には、仮差押えをした意味はなくなることになります(破産手続きにおいて、配当金を得られる見込みはありますが、その金額は限られるでしょう)。
仮差押えが効力を発揮できない場合】
仮差押えが効力を発揮できない場合としては、以下が考えられます
- そもそも、相手方に財産がない
- 相手方の財産が分からない
- 債権者多数であり、破産をされてしまうかもしれない
このような事件では、仮差押えをする実益は無いと考えます。
まず、相手方に財産が無い場合ですが、仮差押えは、財産を持っている相手方であってこそ、効力を発揮するものです。ですから、大前提として、どのような財産を持っているのか明らかにできる必要があります。
もっとも、財産が無い相手に対しては、どのような手続きも効力を発揮することは難しいですが・・
また、十分に資産があるような相手、例えば銀行を相手にするような裁判のための仮差押えということも意味がないので考えられません。
次に債権者が多数いることが明らかであり、すでに信用不安があるような場合には、仮差押えをしても、その相手が破産手続きに移行する可能性もあります。ただ、この場合にも、相手方が破産をしない可能性もありますので、その場合には、仮差押えが効力を有する可能性もあります。
結局、この判断は事案ごとに考える必要がありそうです。
仮差押えが効力を発揮するのは
仮差押えが効力を発揮するのは、上記の逆になります。
- 相手方の財産が分かっている
- 相手方に破産の可能性がない
このような場合には、相手方は債権者からの執行を逃れるために、財産隠しをすることが考えられます。
こういった場合にこそ、仮差押えは効力を発揮します。
たとえば、離婚事件における財産分与を求める場合が考えられます。このままでは、夫が愛人に財産を渡すかもしれない、という場合に、妻は夫の口座を把握していれば、妻は、夫が財産を隠す前に仮差押えをすることが考えられます。退職金などを支給直前に仮差押えをしておけば、入金された直後に夫が散財することを避けることができます。
このような場合には、仮差押えが効力をもっとも発揮できると考えます。
差押えに関するQ&A
差押え債権回収
質問
差押えによって債権を回収できると聞きました。差押えとはどういう手続きですか?どのような財産が差押えの対象になりますか?
回答
- 差押えとはどういう手続きでしょうか?
- どのような財産が対象になるのか?
ここでいう差押えは、「仮差押え」とは違う手続きとご理解ください。なお、「仮差押え」については、前々回、前回に簡単ながらも説明をさせていただいていますので、ご参照ください。
差押えは、裁判での判決を得たものの支払わない場合に、強制的に、相手方の財産の処分を禁ずるものです。そうして、差押えがうまくできた場合には、その財産から、債権者は債権回収をすることができるのです。
債務者名義の動産、不動産、債権が差押えの対象になります。一般的には、不動産、自動車や銀行預金などが対象となります。
まず差押えの対象として大事なことは、それが債務者の名義の財産であるということです。たとえば、債務者がリスク株式会社だとして、その経営者がリスク太郎氏だとします。この場合、債務者がリスク株式会社であれば、リスク太郎氏の個人名義の財産の差押えは困難です。
また、債務者がリスク太郎氏という場合に、リスク太郎氏の大豪邸が妻のリスク花子氏名義という場合も、この大豪邸を差押えることは困難ということになります。
まずは、この債務者名義の財産を探し出すことがスタートです。
たとえば、不動産であれば、住所地、会社の入居している不動産の登記簿謄本を確認してみることで手がかりとなるかもしれません。
また、取引先の預金口座であれば、どの金融機関に口座があるか分かるでしょうし、最近は企業のホームページで取引銀行名を明示している場合もあります。
車については、普段、債務者が使用している車のナンバープレートがわかれば、弁護士会照会の制度を利用すれば(有料です)、所有者を確認することができる場合もあります。
こうして、債務者の名義の財産を探し出すわけですが、実際には、なかなか財産が無い場合もありますし、名義さえ一致していれば何でも差押えができるかというと、そういうわけにもいかないのです。
いわゆる「差押え禁止財産」といわれるものがあります。この場合には、残念ながら差押えはできません。
差押え禁止財産は、いくつかの法律に定められていますが、この点は、次回に確認したいと思います。
本コラムはリスク法務実務研究会にて当事務所の弁護士小川剛が担当している内容を、一部改訂して掲載しております。
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