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和解条項

訴訟費用に関する和解条項

 和解に関連して、訴訟費用について説明をしたいと思います。裁判上の和解条項には「訴訟費用は各自の負担とする」という記載がなされるのが一般的です。

訴訟費用とは

 民事裁判で被告となった場合、訴状が届くことになります。この訴状には、「訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求める」との記載があります。そして、判決には、「訴訟費用は被告の負担とする」「訴訟費用はこれを5分し,その4を被告の負担としその1を原告の負担とする。」といった記載がなされます。

 民事訴訟法61条には、「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。」と定められています。
 この訴訟費用は、よく弁護士費用のことと誤解をされます。あるいは、訴状には「訴訟物の価額」が記載され、その金額と誤解がなされることが少なくありません。

 まず、弁護士費用は、裁判所が決定する訴訟費用には含まれません。次に、この「訴訟物の価額」とは、不動産の請求であればその評価に基づく金額、金銭の請求であればその金額となる等、細かく定められています。この訴訟物の価額によって、裁判所に収める印紙代が定められることになるのです。

 では、訴訟費用には何が含まれるかというと、この裁判所に収めた印紙代が代表的なものです。その他に、証人の日当なども含まれますが、証人は証言をする際に、日当を放棄しているような例も多いかと思います。
 また、証拠や準備書面を提出した数に応じて、一定の加算がなされますが、それも数千円以内となることがほとんどです。このように、訴訟費用は、弁護士費用を含まないということもあり、思われているほど、高額なものとはなりません。

訴訟費用の和解条項

訴訟費用の回収の手続き

 「訴訟費用は被告の負担とする」という判決を得ても、直ちに訴訟費用の支払いを求めることができるわけではありません。裁判が終了した後に、訴訟費用について裁判所に確定してもらう必要があります。この額の確定によって、請求することができるのです。ただし、この請求まで行う例は、かなり少ないのが実例ではないでしょうか。

和解の場合の訴訟費用の扱い

 訴訟費用は各自の負担とする、とした場合には、裁判の終了後に訴訟費用の確定を裁判所に求めることができません。これにより、訴訟費用は、それまで手出しをした当事者(多くは原告)が負担することになるのです。
 なお、和解においても、訴訟費用は被告の負担とする、と定めることは可能ですので、その場合には、訴訟費用を確定する手続きをとることになりますが、和解をする場合には、もはや、その費用も考慮して額を定めればいいのであって、そこまでの手続きをする例は少ないと思います。

和解での合意を履行しなかったら

 経験上、裁判で敗訴して、1000万円を支払えという判決が出ても、支払わない(支払えない)場合は、それなりにあるように思います。この場合、回収の見込みを考慮し、強制執行をすることになります。
 一方で、和解の場合には、どうでしょうか。おそらく、和解金1000万円を支払うと合意をした方は、自分で納得して和解をするわけですから、和解金を支払うつもりはあるのでしょうし、基本的には、裁判所での和解は守られる(合意どおりに履行される)ことは多いものと思われます。
 では、和解で合意をしながら、合意が履行されない場合に、どの程度備えることができるのでしょうか。

和解調書での強制執行

 和解であっても、強制執行については、判決と同様の効力を持ちます。
 和解調書に、被告は原告に対し、平成27年2月28日限り、金1000万円を支払えと記載があり、かつ、その日に支払いが無かった場合には、強制執行をすることができるのです。
 また、「平成27年3月31日限り、本件建物を明け渡す」とされていれば、同日を経過しても明け渡しが未了であれば、明け渡しの強制執行をすることができます。
 ただ、このような強制執行は手間、時間、費用を要するのも事実です。

和解条項での工夫

 和解は合意が整えば、判決よりも自由な条項の設定が可能なので、履行を促す工夫をすることもできます。
 例えば、1000万円を請求する訴訟において、500万円で和解をすることとなった場合に、「1000万円の支払い義務があり、期限どおりに500万円を支払えば、残金を猶予する」といった和解条項とすることが考えられます。あるいは、遅延した場合の遅延損害金を上げるということも考えられます。
 あるいは、原告が金100万円を支払い、被告が不動産を明け渡す、という場合には、金銭の支払いを明け渡し後にすると、被告は明け渡しをしようと考えるはずです。
 そのほか、保証人や担保の追加ということも、場合によっては考えられるかもしれません。
 このように、和解ならではの工夫により、和解条項が誠実に履行されるよう促すことができます。

本コラムはリスク法務実務研究会にて当事務所の弁護士小川剛が担当している内容を、一部改訂して掲載しております。