訴状のチェック
原告によって訴状が裁判所に提出されると、裁判所は訴状の記載内容の審査をします。また、裁判所に収めるべき印紙代、郵便費用が納められているか確認されます。
被告に送付する訴状等の書面の郵送費用は原告が負担することとなります。これらの費用が納められない場合には、裁判は開始できないことになります(なお、訴訟救助という制度により、裁判所への納付が猶予される制度もあります)。
第一回期日の決定
裁判所は、原告が出廷できる日を原告に確認の上、第一回期日を指定します。指定される日は、概ね1ヶ月程度先の日が指定されます。
裁判所は第一回期日を指定すると、訴状とあわせて被告に対し第一回期日の呼び出し状を送付することになります。
これが前回までに説明した訴状の送付(送達)の手続きです。
このように第一回期日は、被告の都合とは関係なく裁判所が指定することになります。
第一回期日までの被告の準備
被告のもとには、裁判所から、原告の訴状、第一回期日の呼び出し状、答弁書を出さなければいけないこと、答弁書の見本等が送付されてきます。
被告としては、訴状に言いたいこともあるが反論の準備をする時間もない、そもそも裁判所に指定された日に行くことができない、答弁書の書き方もわからない、ということも大いにありえます。
また、弁護士としても、第一回期日の直前になって、訴状を受け取った方からどうしたらいいのかという相談を受けることもありますが、指定されている裁判の日には出廷できない場合もありますし、そもそも準備が間に合いません。
第一回期日には被告の準備が不十分なことがほとんど
このような場合でもあきらめる必要はなく、第一回期日までに裁判所に対し、第一回期日は出廷できないが、第二回以降には準備をして出廷できることを伝えることで対応することができます。
具体的には、被告から委任を受けた弁護士は形式的な答弁書のみを提出することになります。
こうして、多くの裁判では、第一回期日には被告の準備が不十分なことがほとんどとなります。原告としては、被告からの答弁書の内容が不十分であって、場合によっては不誠実であると思われるでしょうが、被告には被告の事情があるので、やむを得ない制度と考えます。
本コラムはリスク法務実務研究会にて当事務所の弁護士小川剛が担当している内容を、一部改訂して掲載しております。
前回までに民事裁判で相手方に訴状を送付する説明をしました。今回は、それに関連し、民事裁判での第2回期日以降の手続きを簡単に説明します。
準備書面の提出
訴状、答弁書の提出により、その事件の争点が明らかとなります。
被告の反論
たとえば、お金を貸したので返して欲しい、という貸金返還請求訴訟の場合、被告が「お金を返す理由がない」という反論としては多くのパターンがあります。
被告は「お金を受け取っていない」「お金を原告から受け取ったが、それはもらったものだ」「お金はすでに返した」といった主張がありえます。
ほかにも「暴利行為で公序良俗に反する」「消滅時効だ」といった主張も考えられます。
原告の再反論
これに対し、原告が再反論をすることになります。被告の「お金は返した」という反論に対し「被告からお金を受け取ったが、それは、別の売買契約の代金だ」といった再反論などがあります。
反論はすべて書面でなされる
これらの反論は、すべて書面でなされるのが原則です。
実際の裁判では、期日間に書面を作成し、裁判の期日では、その記載内容を確認するのみとなることが一般的です。
このため、第二回目以降の裁判手続きは、テレビで見るような法廷ではなく、時間もあまり長くはならず、小部屋のような場所でなされることが多くなります。
裁判で作成される書類は独特です。現在は多数のマニュアルがありますが、やはり、一般の方がいきなり作成するのは難しいと思われます。
事実認定と証拠・・・客観的証拠
お互いに書面による反論を重ねることで、争点が絞られます。
争点が絞られると、その争点について、どのような証拠があるのかによって、事実認定がなされます。
証拠がなければ、何が真実かわかりません。裁判で重要なのは証拠ということになります。
そして、証拠の中で価値があるのは、客観的証拠、書面です。相手方が不利な内容を記載した書面は、最も価値のある証拠といえます。
法律相談などで、「証拠はありますか?裁判で重視されるのは書証です。」と説明をすると、「私とAさんが見ています」と言われることがあります。
例えば、過失割合を争う交通事故の目撃者ということであれば、それでもいいかもしれませんが、1億円を貸した証拠が「私とAさんが見ています。現金で貸しましたが、領収証も契約書もありません。」ということでは、他に証拠がなければ、裁判所が1億円の貸金を認めることは難しいことになるでしょう。
これは、交通事故の目撃者の場合には客観的証拠が無いのが不自然ではないのに対し、1億円の貸金の場合には「普通は契約書や領収証があるはず」という経験則に反するからです。
そうすると、法律相談を受けた弁護士としては、1億円の貸金の例では、裁判所に客観的証拠の有無を聞かれることは明らかですので、「契約書などの証拠が無い場合には、裁判所の判断は厳しいものとなる可能性が極めて高いと思います」「今からでも、過去の貸金について、債務承認の一筆を書いてもらえませんか」「裁判はそれから健闘しましょう」といったアドバイスをすることになります。
重要な証拠
上記のとおり、訴訟の類型によって、重要な証拠は異なります。
次回は、重要な証拠について説明をし、次々回以降に証人尋問について説明をしたいと思います。
本コラムはリスク法務実務研究会にて当事務所の弁護士小川剛が寄稿している内容を、一部改訂して掲載しております。
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