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和解契約

 これまで、売買、貸金、保証といった契約を説明してきました。
 今回は、トラブル後の清算のための契約である和解契約を説明します。和解書/示談書/合意書と書面のタイトルは違っても、内容としては同じものです。ここでは和解契約として説明します。

和解契約とは

 しっかりした売買契約をつくって取引を継続していたとしても、何らかのトラブルが生じることはあります。そして双方に責任がある場合、あるいは取引先との関係を考慮することもあり、すべて契約書どおりに解決するとは限りません。

 また、トラブルは取引先との関係だけとは限りません。見知らぬ人と交通事故にあうかもしれません。このような事件が生じた後に、話合いが成立した証として、和解書(示談書/合意書)を作成することになります。

 和解契約の目的は、トラブルの終局的解決です。記載内容があいまいであったり、和解書の記載内容が不適切なために、さらなるトラブルを招かないように注意が必要です。

和解書(示談書/合意書)記載上の注意点

 一般の契約書と同じように、当事者(誰が「甲」、誰が「乙」、利害関係人はいないのか)をはっきりさせます。そして、何に関する示談書なのかを明確に記載します。

交通事故の場合

 事故証明書に記載の事故発生日時・場所・当事者・車両番号等を記載することで、交通事故の特定ができます。

契約上のトラブルの場合

 日付・取引内容等により、示談の対象を特定することができます。たとえば「平成25年3月1日から31日に乙が甲に納品した商品(型番○○―○○)の一部不具合、納期の遅れに関し」といった記載となります。

和解条項

「乙は甲に対し、本件の解決金として、金○○円を平成25年4月1日限り支払う。振込手数料は乙の負担にする」「乙が甲に納品した商品(型番○○―○○)は、乙に返品する。返品に要する送料は乙の負担とする。」といったように、和解の骨子となる条項を定めます。

清算条項

 和解契約の重要な点は、同じ内容について再度の紛争を招かないことです。そこで、和解契約の末尾には必ず

  • 「甲と乙は、本和解条項に定めるほか、何らの債権債務が無いことを確認する」あるいは
  • 「甲と乙は、乙の納品遅れに関し、本和解条項に定めるほか、何らの債権債務がないことを確認する」

といった記載をすることになります。これを清算条項といいます。

 なお、この二つの清算条項では、意味がまったく異なります。
 2番目に記載した清算条項であれば、「商品の納期遅れ」以外のトラブル、たとえば不具合・瑕疵といった問題については和解の対象外と解される余地があります。つまり、和解後も不具合を理由とする請求はなされる可能性(請求できる可能性)があります。

 金銭を支払う側の立場であり、全てのトラブルを解消する目的であれば、清算条項に限定を加えるべきではありません。
 同様に交通事故の示談書でも「物損に関し」「医療費に関し」といった制限が付されたものなのか、終局的な解決なのか、明確にする必要があります。

和解契約で紛争を終わらせる

 和解契約は、紛争を終了させる契約です。その契約が新たな紛争を招かないように留意したいものです。

本コラムはリスク法務実務研究会にて当事務所の弁護士小川剛が担当している内容を、一部改訂して掲載しております。

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